漫画 『君たちはどう生きるか』 

 今一番売れている本、オリコン歴代1位!200万部を突破したようです。新たな人生をスタートさせた若い世代に伝えたい内容です。4/2、入学式や入社式が行われました。たまたま地元名門私立男子校の近くを通りかかり、入学式が終わって門から出てきた中学生や父兄達の列に遭遇しました。難関を突破した本人はもとより、綺麗な着物姿で歓びにあふれた母親や誇らしげな父親の姿がたくさん目に飛び込んできました。今年は桜が早かったようですが、まさに「桜咲く」幸せに満ちた人生の一コマを垣間見せてもらったようでした。
この本には二つの重要なことが書かれていたように思います。一つはメンタルトレーニングにも通じるところで、人生のミッションに自らが気づくことの意味です。その優れた能力を使って、何を成し遂げたいのか?それによって自分がどのように役に立ちたいのか?という答えを導き出せて、その目標を確信できたとき、人には大きなパワーがみなぎり、心を強くして果敢に立ち向かって行くことができる。その目標が世の中の時流にしっかり結びついていることが成功には欠かせないことにも触れていました。
もう一つは、人生には重要な人間関係の構築。そこでの失敗から人は苦しみ後悔し自己否定に陥ります。その苦悩は、自らが選択しながら生きて行くなかで、正しいことをしたいという想いの現れであること。後悔で頭が一杯になっている時、自責の念が沸いてそこから離れられなくなる。相手が自分を許してくれないのではないか?こんな自分はいない方がマシだなどとマイナス思考に苛まれたら、いったんその思考から離れることがポイントとして書かれていました。そこはマインドフルネスや認知行動療法にも通じるところです。過去の後悔から失敗を二度と繰り返さない決意が、その後の自分を後押してくれることも分かりやすく解説されていました。また、貧富についても触れられており、貧しさゆえに抱いてしまう気持ちがあり、それを理解することなく裕福なものが見下げる心持ちで接するような態度では人として成熟しない。善良な心がけを持っていたとしても、表現する強さが足りなくては上手く行かない。つまり人間関係において立場の違うお互いの背景を謙虚に思いやり、気持ちを表現し伝えて行く勇気を持つことで、更なる信頼や学びが生まれること。そうした人と人との繋がりのなかで、自らを活かし社会の一員となって行くことの大切さを作者・吉野源三郎氏は伝えているように思いました。(写真は本の表紙を拝借)

メンタルヘルス不調の背景、その大半が人間関係の悩みと言われていますが、この本に登場する、悩んだときいつでもそばで導いてくれる「おじさん」は誰にでもいる訳ではありません。そこが出版の原点であったようですが、この本に出会う人が増え、学校でのいじめや社会でのパワハラ問題についてもあらためて考える機会になればと思います。(写真は愛知県芸術文化センター隣接栄公園の桜)